煎茶は文人墨客が、お茶をいただきながら清談を楽しむことから始まりました。今、私たちは忙しい生活を送っています。そのようなとき、煎茶をたしなむことで、部屋の一隅 にある花を愛で、一椀のお茶をいただきながら至福のひとときを過ごすことができます。書面、花、器、庭園など私たちの興味の世界は尽きません。ほかにこのような心豊かな世界はあまり多くないでしょう。

 煎茶という共通の趣味を持つことで、違う分野の方々とも交流ができ、一つの事柄に対してもさまざまな考え方があることがわかります。私たちの人生に大きな広がりを持たせるのです。また、人と人とのふれあいで大切なのは礼法です。親しいなかにも礼法は必要です。初代家元・ 諸泉祐道が、煎茶道に小笠原礼法をとり入れて日本礼道小笠原流を創流した意義もここにあったといえます。

 煎茶を学ぶことで、礼法とともに煎茶道の歴史や美術的な工芸品の知識も深まります。また、先生についておけいこを繰り返し、自然な動作で、無意識に身体が動くようにいたしましょう。

四代 家元 諸泉祐園

ハースト婦人画報社「お茶会のマナー手帖」より

日本礼道小笠原流事務局